中国企業はいづれ偽物から本物になる~私がHuaweiと戦ってきて分かった事~
2015年3月13日付の日経新聞でアップルを丸パクリする小米の記事が掲載されていた。
小米はアップルの製品のみならず、経営手法もパクっているとのことだった。
この記事を読んで私は強く感じた事があった。
なぜならば、私は日本で働いていた時のライバル企業がとある中国企業で私の会社もあらゆる面で模倣されていたからだ。
アップルのクックCEOは小米の事をライバルだけれど心配はしていないと発言していた。
私の会社の周りの社員もクックCEOが発言したように、ライバル企業であった中国企業をパクリ企業としてバカにしていた。
相手にしていなかった。
私自身も周りの社員と同じで、正直相手にしていなかった。
しかし、最終的にこの中国企業は技術も信頼も何もかも奪い、日本で市場を拡大していったのである。
そして、この中国企業をバカにしていた同僚たちの多くが今ではこの中国企業で働いている。
最終的に今では私の企業よりもこの中国企業の製品が世界でデファクトスタンダードとなりつつある。
中国企業が私の企業に代わり、業界をリードする存在となっている。
今回中国のパクリ企業について私の実体験を基に記載していきたい。
ある中国企業との競合
私の会社のライバル企業はHuaweiという会社だった。
数多くある競合他社の中で一番のライバル企業だった。
私の日本での仕事はある意味この企業との戦いの日々だったと言える。
Huaweiとは
私の会社のライバル企業だったHuaweiは中国の会社だ。
通信機器だけでなく、携帯の端末、タブレット、ゲーム機にも参入している。
Wikipediaより引用
華為技術有限公司(ファーウェイ・テクノロジーズ Huawei Technologies Co. Ltd.)は、中華人民共和国広東省深圳に本社を置く通信機器メーカーである。
ファーウェイは1988年に設立され、通信機器の研究開発、製造、マーケティングに特化したハイテク企業であり、通信事業者にカスタマイズされたソリューションを提供している。
日本で働いていた時、Huaweiジャパンとは競合として何度もコンペをしたし、時には一緒に仕事をした。
そして、彼ら、中国企業の凄さを分からされた。
バカにしていたが、私が日本を離れる頃は既にバカに出来ない存在となっていた。
最大の脅威となっていた。
そして、今では市場を圧巻する存在となり、立場が逆転してしまった。
中国企業の凄い所
中国企業の凄いところは5つある。
私の実体験を基に凄い所を記載していきたい。
- 徹底的にコピーする
- 人件費や製造費、コストがめちゃくちゃ安い
- 選び抜かれた中国人が働いている
- 技術力が高い
- 本物を越えて、偽物が本物となる
徹底的にコピーする
私の会社の製品とHuaweiの製品は外見は瓜二つといってもいい程似ていた。
そして、内部の仕様も完璧なまでに同じだった。
中国企業は徹底的にコピーするのだ。
私の経験
私はエンジニアとして顧客が導入している他のベンダー機器と私の会社の製品の接続が上手くいくかという検証をする事が度々あった。
基本的には他ベンダーと仕様が全く異なる為、他ベンダーの仕様を理解して、お互いの妥協点を見つけ出し、
機器の接続、データのやり取りをする必要があった。
普段はライバル企業だが、同じ顧客から選ばれてた製品としてお互いの事を理解して、歩み寄らなければならないのだ。
これは非常に面倒な作業だった。
仕様が異なり、お互いの製品の規格から話し合わないといけないような事も多々あった。
しかし、中国企業は違った。
製品内部の仕様、細かいコマンドレベルまで瓜二つだったのだ
完璧に一緒だった。
同じ製品と言ってもいいくらい同じだった。
普段は数日、時には数週間かかる検証が10分で終了したのだ。
自社製品を使用したのと変わりがなかった。
ライセンスとかどうなっているのか疑問であったが、
中国企業は完璧なまでにコピーすると実感した瞬間だった。
人件費や製造費、コストがめちゃくちゃ安い
中国企業は人件費が安い。
私の企業の製品はただでさえコストが高いと文句を言われていたが、
中国企業は非常に安価で販売していた。
基本的に中国製品は日本や欧米諸国の製品よりもほぼ全てのモノが安いだろう。
それは中国の人件コストから来ている。
彼ら中国人が安価な人件費で働いてくれる為、安い製品を購入できるのだ。
私の経験
顧客に言われて今でも忘れていない事がある。
中国企業の製品は同じ規格の製品で約10分の1だった。
ほぼ同じ製品でも0が一つ少ない。
10分の1だったのだ。
選び抜かれた中国人が働いている
このHuaweiで働いていた中国人と何度も仕事したが、
正直個人の力ではまるで勝てない中国人が働いていた。
私自身、会社のブランド名があるから彼らと対等に話をする事が出来た。
もし、会社の後ろ盾がなければ、彼らとは対等の位置に立つ事すらできなかったと思う。
13億の人口から選び抜かれた中国人が中国を代表する企業に入社し、その中からさらに優秀な人材が日本へ派遣され、日本で働いていたのだ。
彼らはやはり優秀だった。
私の経験
Huaweiで働く中国人はほぼ完璧な日本語を喋っていた。
彼らと会話する時に私が英語で話すことはなかった。
彼らが日本語を話してくれていた。
私の会社の外国人プロマネ、エンジニアと話すときは流暢な英語を使っていた。
そして、ビジネスマナーが悪いという事も感じることはなく、
礼儀正しく、私の会社の人間の方がマナーが悪いんじゃないかと感じるほどだった。
技術的にもシスコの最上級資格であるCCIEを持っていた人がゴロゴロ働いていた。
仕様の話し合いをする会議でも彼らは自社の製品を熟知していた。
私の会社には顧客の方が自社の製品を長く使っていて、熟知しており、逆に突っ込まれて何も言えないことなどもあった。
彼らにそんなことはなかった。
正直に中国人のレベルが高いと感じていた。
技術力が高い
中国企業の製品をバカにしていたが、コピー、パクリだけしか出来ない企業だと相手にしていなかった。
しかし、彼らは自社製品に問題があった時に即座にソリューションを提供し、
また開発環境も抜群によい環境を提供されていた。
研究施設用のHuawei大学も中国の深圳にはある。
私の会社なんて検証する場所を取り合うような事が日常茶飯事で起こる非常に羨ましい環境がHuaweiにはあった。
中国政府がバックアップしているという噂もあった。
Huaweiの技術力は非常に高かった。
ただ模倣しているだけではなかった。
圧倒的な開発環境から独自の技術、ソリューションを模倣した製品に取り入れていく
最初は模倣していき、次第に独自の技術、ソリューションを入れていくのだ。
私の経験
顧客に新製品を導入、新たな顧客に製品を紹介する時に競合企業が一斉にコンペをしていた。
大抵1回か2回行い、顧客がベンダーを絞っていく。
私も何度も新自社製品の検証をして、このコンペに参加していた。
今でも忘れられないのが、
ある顧客の1回目のコンペでこのHuaweiと私の会社が競い合う事になったのだが、
私の会社はこの顧客と既に製品を導入している実績があり、必ず通る、選定されると思っていた。
しかし、1回目のコンペで製品が出すパフォーマンスで負けてしまったのだ。
会社側は力を入れていなかったので、私を含めあまり良い人選をしていなかった。
その結果がコンペで出てしまい、Huaweiの方がパフォーマンスが良いという結果が出てしまったと考えていた。
この事に危機感を覚えた私の会社のトップマネジメント層は私のチームの最強の人選で2回目のコンペに挑むことになった。
私が苦手としていた仕事がめちゃくちゃ出来る非常に強面の先輩を投入したのだ。
唯でさえ通常業務で忙しいこの先輩をコンペに出させた事は会社の強い意志を感じた。
普段この人がコンペの仕事に回される事は無かったからだ。
この人が出ても駄目なら、たぶん誰が出ても駄目だろうという人選だった。
そして、コンペは行われたが、1回目と同じく負けてしまった。
製品自体はHuaweiの方が高いという結果が下された。
あとはうちの会社に残っているのは導入した事がある実績と顧客からの信頼だけだった。
しかし、最終的に顧客はHuaweiを選定した。
実績と信頼はないが、製品も優れていて、コストも10分の1で済む中国製品を選んだのだ。
この時に私はこの企業は既にただのパクリ企業ではない、もはや本物を凌駕していると感じた。
すでに会社の同僚も皆このころにはパクリ企業とバカに出来なくなっていた。
本物を越えて、偽物が本物となる
中国企業はいい技術を取り入れて、自社製品として販売していく。
始めはパクリ、コピー製品として市場、顧客に認識されていく。
しかし、そのコピー企業がコピーした製品に独自の技術を取り入れていき、
やがて本物を技術でも越えていくのだ。
模倣、真似るという事は日本も行ってきた手法だ。
今多くの日本企業が世界をリードする製品を導入していて、
頂点に立っているので模倣していないように思われているが、もともとは日本企業も日本人も外国の良い技術、製品を真似て成長してきた。
今、中国の多くの偽物と揶揄されてきた企業が本物として世界をリードする企業となっている。
偽物が本物となっているのだ。
私の経験
私が日本で働いていた時の同僚の多くがいま、このHuaweiで働いている。
じつはこの中国企業に転職しているのだ。
彼らは数年前、パクリ企業とバカにしていた人たちだったのに、と感慨にふけている。
技術のみならず、人も中国企業に流れているのだ。
面白かったのが、私の仲の良かった同僚もこの中国企業に転職したのだが、
1次、2次面接共に私の元々いた会社の人が面接官だったということだった。
如何に多くの人材が流れているか、簡単に想像できる。
そして、金払いも良いのだという。
そりゃ転職するなという印象を受けた。
私ももし、日本に帰ったら中国企業で働くという事が一つの大きな選択肢として考えている。
それくらい中国企業は今となっては魅力的になっている。
最後に
小米自体は2010年設立で、新しい企業だが、既に中国ではアップルを越える売り上げを上げている。
コピーした製品だが、値段が安く、中国国民に受け入れられている。
Huaweiが今世界をリードする存在になったように模倣されている企業は新しい製品を作り続けていかないと中国企業が今の立場を簡単に逆転させるだろう。
今後アップルはイノベーションをし続けていかないと、世界のアップルから世界の小米になってしまうかもしれない。