プミポン国王死去後、経済的視点で見る今後のタイ経済と将来の展望について
先週、プミポン国王が崩御されてから、今日で6日が過ぎた。
先週金曜日は会社に出社していないタイ人が多かった。
自主的に会社を休みにしている企業も多かった。
週が明けた月曜日そして火曜日、水曜日の今日は、先週来ていなかったタイ人も通常通り出社していた。
自主的に休みにしていた企業も通常通り、今週はいつもと変わらず営業を開始している。
みなが白や黒の服を着て、喪に服している状態ではあるが、いつもの状態のタイに戻っている。
バンコクで働く僕自身も今週は、先週金曜日とは異なり、仕事が全て予定通りに進んでいる。
いつものタイに戻りつつある。
そう感じている。
しかし、やはり今後のタイについて不安に思っている人は多い。
特に日本人は顕著に不安に思っているのではないだろうか。
タイのスーパーやデパードなどでは、買い占め騒動がおこるような状態にはなっていなかったが、日本人御用達のフジスーパーなどでは、商品の買い占めによる品切れが出ていた。
これは、タイの今後について、不安に思っていることの表れだったのかもしれない。
今回は、僕の個人的な観測による経済的な視点から、今後のタイを記載していきたいと思う。
経済的視点から見る今後のタイについて
まず、結論から述べてしまいます。
プミポン国王が崩御されてしまってから、株式市場に経済的な大きな変動はない。
この一週間の動きを簡単に見ていきたいと思う。
まず、10月12日午後にプラユット首相がチョンブリでの会議に出席せず急遽バンコクに戻ったという噂がタイ国内で広がった。
これは噂ではなく実際にそういった行動があったことが、のちに政府機関からも報道された。
そして、この日、株式相場は特に大きな経済的ニュースがなかったが、この噂により信用不安が広がり、株価は急落した。
すでに10月7日の時点で下降トレンドが始まってはいたが、これもプミポン国王の不安定な容体に関する噂が広まっていたためだった。
この状態はプミポン国王が崩御されてしまう13日夕方の取引が終了するまで続いていた。
しかし、プミポン国王が崩御された翌日の14日、SET指数は何かに反発するように急騰した。
プミポン国王が死去された報道が正式にされた翌日は大幅に上昇し、元の標準とまではいかないものの、ある一定の数字にまで戻っていたのだ。
この反発は、経済的な影響は少ないと市場が判断したものと思われる。
株式市場が反発する形で、如実に市場心理が相場に表れていたと僕自身は感じていた。
株式市場は大きな混乱を見せなかった。
次にタイの通貨であるバーツの為替市場も見てみたい。
為替市場も結論から言うと、大きな混乱は起きていない。
一時的に大きな変動は確かにあったが、影響は出ていないの実情だ。
もともと、タイバーツは対ドルに対してバーツ安の状態が2015年中盤から続いていた。これは円に対しても同じだ。
しかし、国王の健康不安の噂が流れた10月7日ころから大幅に下げるトレンドに入っていた。
これはSET指数の下降トレンドにとても似ているトレンドだった。
大きなニュースが特にないにも関わらず、為替市場は揺れていた。
しかし、国王が崩御された13日夜から、突如バーツ高のトレンドに入った。
為替市場は、株式市場と異なり24時間売り買いが発生している。
為替の取引市場はずっと動いているわけなのだが、13日19時に正式に国王崩御が報道されたときにも大きな混乱は発生していなかった。この13日に、タイバーツは0.8%も上昇していた。
対円に対しても、13日を機にバーツ高のトレンドに移行している。
外交筋の経済アナリストからも、経済が大きく混乱する公算は小さいのではないかとの見方を示したというニュースが流れていた。
実際に株式、為替市場が数字で見せる形で、相場がそれを証明してみせていた。
また、株式、為替以外の実経済の面でも影響を見ていきたい。
実際の経済活動も大きな変動は出ていない。
前述したように、先週金曜日には多くのタイ人が会社を休んだ、自主的に休みにしている企業も多かった。
しかし、週が明けた今週はどの企業も営業を再開している。
タイ政府からも30日間の喪服期間に入ることがアナウンスされたが、経済活動は継続するようにとのアナウンスも出されている。
タイ政府も経済活動を鈍化、縮小させるつもりはないのだ。
観光も一部規制や制限は今後も行われるとは思うが、通常通り行えるはずだ。
なぜなら、タイにおいて、観光業による歳入はタイ経済を考える上で非常に重要だからだ。
タイでは毎年、400億ドル近くの観光収入がある、これはGDP比率で見て、10%強の比率だ。
僕の個人的観測では、実際の経済活動に計上されないシャドーマネーも入れると20%近くは行くのでないかと思っている。
少し話はずれたが、実質ベースでもタイにおいて、観光は非常に重要なのだ。
昨年2015年8月、中国のウイグル族による無差別テロがバンコクで起ってしまったが、大きな混乱は発生しなかった。
このテロが起こった年に、タイの観光収入は445億ドルという数値を記録していた。これは世界的に見ても非常に高い数値だ。
タイを訪れる旅行者の数も2015年には過去最高を記録していた。
タイは、世界的に見ても、世界6位の観光立国なのである。
そして、2016年度の今年は、前年比で約10%増の500億ドル近くの観光収入をタイ観光政府機関は目標に掲げていた。
タイの経済成長において、外国人旅行者からの外貨獲得は重要な経済成長ファクターになるため、外国からの観光収入をタイ政府は止める気はないのだ。
これが、喪服期間に入るけれど、経済活動および観光は今まで通り行うようアナウンスがされていたことの裏付けだ。
為替、株式、実経済の経済的な側面から見て、プミポン国王崩御による経済的影響は少ないというのが現状なのである。
経済的に見るタイの歴史
次に、なぜ経済的な影響が少なかったということを考えてみたい。
それは、プミポン国王は、経済的な主導権を握る形でのリーダーシップを発揮していなかったからだ。
正しいかどうかはわからないが、日本の安部首相のアベノミクスのように、経済的な主導権を握ってきたわけではなかったのだ。
近年のタイの著しい経済発展は、タイの国民自身が成し遂げた面が強いのが実情だ。
ここで、タイの近年の歴史を見てみたい。
タイがここまでの経済発展を遂げるまでに、タイでは今までに幾多の困難があった。
2006年9月にタイ陸軍によってクーデターが行われ、当時のタクシン政権は倒れた。
この時に株式市場は大幅に下落した。
2年後の2008年11月にはタクシン派と反タクシン派で対立が起こり、スワンナプーム国際空港が封鎖されるまでに至ってしまった。
時期的にはリーマンショックと重なってはいるが、この時も株価は急落した。
そして、2年前の2014年5月には、当時のインラック政権が軍事クーデターによって倒れた。
上昇トレンドに乗っていたと思われるタイ経済そしてSET指数はこの時も急激に落ちていた。
タイの歴史を振り返ると、今までに幾度もの政治的事件が発生していた。
そして、その度に経済にも多大な影響を及ぼしていたが、いづれもが短期的な影響だった。
なぜなら、いづれもの政治的事件でプミポン国王が国民や軍の間に入り、仲裁し、国民が安心し、経済不安を払拭していたからだ。
プミポン国王は経済的な主導権を握ってはいなかったが、政治的な危機にいつも仲裁に入り、問題をまとめるに至っていたのだ。
言い換えるならば、プミポン国王がいたからこそ、短絡的な経済危機に収まり、タイ経済を継続的にここまでの発展をさせるに至っていたのだ。
政治的な対立以外にも、2011年には洪水による甚大な被害が出て、GDP成長率はマイナス成長になることもあった、しかし、変わらず発展してきた。
このタイという国の経済基盤はしっかりしている。
プミポン国王亡き後もタイの経済がいきなり危機に陥ることはないというのが僕の観測だ。
タイ経済が影響を受けるだろうと思われる注視しておくべき今後のニュース
僕個人としては、直近ではタイの経済は今まで通り成長していくと考えている。
しかし、外部からの外的な要因によるネガティブな経済影響を受けることを懸念している。
もし、経済的なことでタイが不安であるというならば、タイの内政面よりも他国の大きなニュースを注視しておくべきだ。
僕がいま懸念している海外のニュースを一つづつ紹介していきたい。
アメリカ大統領選挙
まず、2016年11月8日。
あと1ヶ月もしないうちに、アメリカで次の大統領を決める選挙が行われる。
大方の予想では、民主党のヒラリー当選、共和党のトランプ落選が濃厚だ。
しかし、僕自身は正直にまだ分からないと思っている。
トランプのマニュフェストは、アメリカ人から見るとそこまで悪くない。
もしかすると、もしかするかもしれない。
万が一、トランプが当選するような事があれば、世界は大きく変わる可能性がある。
まず、ドルに対しての為替市場が大きく変動することが予想される。
対ドルに対するバーツの価格も大きく変わっていくだろう。
まだ記憶に新しいが、今年6月23日にイギリスのEU離脱を問う国民投票の際も、大方の予想を裏切り、僅差でEU離脱派が上回り、イギリスがEUを離脱するというBrexitが決まった。
アメリカ大統領選もBrexit同様、どうなるか分からないと僕は考えている。
アメリカの大統領選挙は注視しておくべきだろう。
そして、もし共和党のトランプが大統領になるようなことがあれば、タイそしてASEAN諸国に対して、どのような外交を行っていくかチェックしておくべきだ。
ドイツ銀行の財政難問題
また、ドイツ銀行の信用不安、財政難のニュースも注視しておきたい。
このドイツ銀行が扱うデリバティブ(CDS)の価格は、現時点でリーマンブラザーズが抱えていたCDSの数十倍と言われている。
この多額のデリバティブ商品を抱えるドイツ銀行が今、デフォルトするのではないかと連日ニュースで報道されている。
そして、メルケル首相も救済するのかしないのか態度がハッキリしていない。これが信用不安にも繋がり負の連鎖に陥ってしまっている。
もし、ドイツ銀行が破綻するような事があれば、世界経済は必ず混乱に陥るだろう。
世界経済は今グローバルに密接に繋がっている。
2008年のアメリカに端を発した、リーマンショックによる世界的金融危機の際も、タイも他の国の例外に漏れず、経済は停滞した。
ドイツ銀行が今後どうなっていくか、ドイツもしくはEUが救済するのか、それとも破綻してしまうのか、チェックしておきたい。
中国の景気後退
最後に、中国の景気後退、バブル崩壊のニュースも気にしておくべきだろう。
現在のタイは中国よりの政権とも言われている。
実際近年、中国寄りと思われても仕方ない行動が顕著に表れている。
タイと中国は地政学的にも近く、経済だけでなく文化的、歴史的な結びつきも非常に強い。
タイは中国経済の影響を受けやすいのが実情だ。
中国の景気後退はタイも必ず影響を被るだろう。
中国の経済動向も日頃からチェックしておくべきだ。
経済的な面で言うと、プミポン国王の崩御に伴う影響は少ない。
内政面よりも、世界のニュースを注視していくべきだと個人的には考えている。
最後に
最後になるが、僕の今後のタイ経済の展望を書いていきたい。
タイが位置するASEAN諸国は人口6億人を抱え、これから大きな発展を遂げていくことがまだまだ可能なポテンシャルが非常に高い地域だ。
インドと中国という今後の経済大国の間に、位置していて、地政学的に見ても明るい。
ASEANという地域は必然的に今後も発展していくことは間違いないだろう。
このタイという国も他のASEAN諸国と同様に発展していくはずだ。
僕はこれからもタイはASEAN諸国とともに、経済は継続的に発展していくと思っている。
タイはASEANの中でも中心に位置しているし、タイがASEANの主導権を握って、リーダーシップを発揮するべきだとも思っている。
他のASEANの国にも色々と問題があり、世界もそれを望んでいるのではないだろうか。
先日、プミポン国王死去後にタイの副首相より2017年末予定通り、民政移管を決める総選挙を行うことがアナウンスされた。
これは良いニュースなのか、悪いニュースなのかわからない。
なぜなら、これからのタイにプミポン国王はいない。
本当の意味で今後のタイ経済がどうなっていくかは、この民政移管後に真価が問われることになるだろう。
今後も発展していくか、ASEANのリーダーとなれるかの鍵は、民政移管後にどのような問題が起こるか、そしてそれをタイ人たちがどのように解決していくかだろう。
今後起こりうる問題に対して、タイ人がプミポン国王亡き後にどのようにして解決していくかだけだ。
非常に重要なリスクではあるが、プミポン国王崩御に伴う経済的なリスクは、これだけなのだ。
それ以外は経済的には明るいニュースの方が多い。
僕個人としては、タイが今後も発展して欲しいと考えている。
これは、一般的にはかなり楽観的な見方かもしれない。
でも、やっぱり、僕はタイに住んでいるし、タイが好きだから楽観的になってしまう。仕方ないだろう。
タイが好きな日本人は多いし、タイがこれからも発展して欲しいと思っているのは僕だけじゃないはずだ。
前述したようにタイにおいて、観光業による歳入は非常に重要だ、
これからもタイが好きな日本人は変わらずタイに旅行して欲しい。
タイが好きな日本人が今後も変わらず、タイに旅行をしていくことで、タイの経済を今後も発展させていく。
タイという国のこれからの発展に、タイ旅行することで貢献していって欲しい。そう強く思う。
タイ好きの日本人は、これからも変わらないタイ旅行をぜひ!